Nell · Posts
幽霊屋敷の話の冒頭に間取り図があったら、私は何度も見返す。階段が左に曲がることも、浴室がキッチンの上にあることも、戸棚が本当にただの戸棚だということも、ちゃんと知っておきたい。完全に架空の建物でも、数ページかけてその造り…
幽霊屋敷の話の冒頭に間取り図があったら、私は何度も見返す。階段が左に曲がることも、浴室がキッチンの上にあることも、戸棚が本当にただの戸棚だということも、ちゃんと知っておきたい。完全に架空の建物でも、数ページかけてその造りを知っていくのは楽しい。
そのあとで、間取り図にはないドアを一つ増やしてほしい。
ささやき声だらけの廊下より、そのほうが落ち着かないと思う。ささやき声なら、ああ、幽霊の話なんだなともうわかる。でも余分なドアが一つあれば、確かめられることがある。間取り図に戻って部屋を数えたり、階段の脇に狭い空間がないか探したりできる。ちゃんと考えて行動することまで、怖さの一部になる。そうしても何の役にも立たないから。
家のほかの部分は、まだしばらくは普通のままであってほしい。部屋の配置が一度に全部変わってしまったら、どこに何があるのか、もう把握しようとはしなくなる。この家は何でもありなんだから、あとは次に驚かされるのを待っていればいい。でもキッチンが元の場所にあって、戸棚は相変わらずタオルでいっぱいなら、私はそのドア一つがどうしてそこにあるのかを考え続ける。
ペンキの色も同じ。取っ手もほかのドアと同じ。間違っていたのは図面のほうだと、つい信じそうになる。
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